働きたい障害者/介護士/利用者を三方よしで繋ぐロボ、万博からプロ向け次ステージへ

周南公立大学情報科学部の河村拓実助教(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部 研究協力者)が取り組む研究成果である遠隔就労支援ロボットが、H.C.R.2025 第52回国際福祉機器展&フォーラム(2025年10月8日~10日)に出展されました。

このロボットは、EXPO2025大阪・関西万博にて、障害者の未来の働き方を描くコンセプト機として初公開され(2025年6月 EXPOメッセ「WASSE」)、来場者の方々とともに装飾を施しながら完成させたものです。今回のH.C.R.(Home Care & Rehabilitation)はアジア最大規模の福祉機器展示会であり、福祉・介護分野のプロフェッショナル(専門職・実務者)や障害当事者が多数来場しました。遠隔就労支援ロボットは、障害者の未来の働き方を世界的に発信した万博を経て、より実践的なフィードバックを得るための次なるステージへと歩みを進めました。展示会では、多くの専門職やユーザーの方々から、様々なご意見や具体的な追加機能のニーズ、実用化はいつになるのかといった前向きなご質問を多数いただきました。これらの声をもとに、今後も研究開発を継続し、社会実装に向けた取り組みを進めてまいります。

展示物の概要:遠隔就労支援ロボット

本ロボットは、外出が困難な方が介護などのサービス施設で働くことを可能にすることで、「働きたい障害者」「現場の専門職」「サービス利用者」の三者に価値をもたらす「三方よし」の実現を目指した、これまでにない支援ロボットです。介護現場の専門職と、重度肢体不自由者とともに研究開発・実験を繰り返す中で生み出され、「みんなでつくる」といった、他にはないコンセプトで開発されたものです。

主な特徴

•新たな遠隔就労を実現する:アバターの役割これまで障害者にとって困難であった身体的パワーの必要な仕事を遠隔で実現します。これにより、高齢化・人手不足が深刻な介護現場で、障害者が「支援される側」から「支援する側」へと役割を転換する、これまでにない就労のかたちを提案します。•完全自動ではない、人の個性を活かす:パートナーの役割AIでは捉えきれない「気づき」や「共感」の視点を、障害当事者の経験をもとにロボットに積極的に取り込む先進的な取り組みです。これを通じて、負担の大きい介護現場の専門職の手を煩わせる“ちょっとした作業”を、さりげなく支援します。•利用者・専門職と支え合う:メンターの役割遠隔地の障害者は、利用者やその家族、経験の浅い介護士にとってよき相談相手になると同時に、ご自身もピア的・専門的なサポートを受けられます。互助の範囲を、ロボットを介することで拡張し、人と人とが互いに支え合う、未来の共生社会を描くプロジェクトです。

(参考リンク)H.C.R.2025 第52回国際福祉機器展&フォーラム公式サイト

大阪・関西万博にて来場者の皆様に装飾いただいたロボット
大阪・関西万博で操作体験いただいた方とも「みんなでつくる」
国際福祉機器展でデモ中の遠隔就労支援ロボット
国際福祉機器展で展示されたコンセプト機と河村助教