人間健康科学部看護学科 大達亮准教授の研究 精神科看護師が長期的なケアを進めるための力に関する成果がJournal of Psychiatric and Mental Health Nursingに掲載されました。
【論文情報】Odachi, R., H. Yada, K. Adachi, and M. Buyo. 2025. “ Skills and Resources of Psychiatric Mental Health Nurses to Support a Long and Uncertain Recovery Journey: A Grounded Theory Approach.” Journal of Psychiatric and Mental Health Nursing 1–13. https://doi.org/10.1111/jpm.70071.
【研究内容】この研究は、精神科の看護師さんたちが、回復が長く、予測が難しい精神疾患を持つ方々を、どのようにして支え続けているのかを明らかにしたものです。長期間にわたる精神科ケアでは、対象者の目に見える変化がすぐに現れないため、精神科看護師は「ケア方法に見通しが立たない」ことやそれに伴って感情的に疲弊してしまうといった大きな負担や困難を感じることがあります。このような負担は、看護師が自分の役割の価値を見失いかけたり、ケアの意味を見いだせなくなったりする原因にもなります。当該研究では、このような負担や困難感を乗り越え、対象者の回復をすすめるための継続的な質の高いケアを提供するために看護師は「ケアの再定義」という戦略を用いることを明らかにしました。これは、看護師が対象者への理解を修正し、自分の視点を調整し、実践の中で新しい意味を創り出すという、ダイナミックに繰り返されるプロセスです。またこのプロセスの中では、看護師の「不確実性へのオープンさ(Open-Mindedness about Uncertainty)」という ケアの結果やプロセスが不透明であっても、失敗や曖昧さを受け入れながら仕事を続ける能力が重要であることがわかりました。「不確実性に対するオープンさ」は、詩人キーツが提唱した「ネガティブ・ケイパビリティ(Negative Capability)」という概念と類似していました。これは、「事実や理性をせっかちに求めず、不確実性、神秘、疑問の中にいる能力」を指します。精神科看護師は、すぐに解決策がない状況でも、立ち止まり、患者さんに寄り添い続けるという、一見矛盾する「粘り強さ」と「創造性」の両方を発揮していることが示されました。
上記の内容を含めた論文はJournal of Psychiatric and Mental Health NursingのWebサイトで閲覧可能です。