大学のスゴい研究、見せます!
企業ガバナンスが研究開発投資と株主還元策との関係に与える影響について
経済経営学部 経済経営学科 教授 長澤 賢一
Q1. この研究はどんなテーマですか?
我が国においては、2014年及び2015年にスチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが導入され、企業ガバナンスが強化されています。企業ガバナンスが強化されたことによって、機関投資家による配当圧力が高まりました。このような背景を踏まえ、企業ガバナンスの強化が、研究開発投資(R&D)と株主還元策の関係にどのような影響を与えるのかを研究しています。
Q2. なぜこのテーマに注目したのですか?
研究開発が成功するか否かは不確実性が高いため、企業はその投資原資を内部資金に依存する傾向があります。一方でガバナンス改革が進み、株主からの配当圧力が高まる中、企業は限られた内部資金を「未来の成長のための投資」と「株主への利益還元」のどちらに振り分けるかで悩みます。これまでの先行研究では、成長企業はR&D投資を優先し、株主還元を抑制することが主張されておりますが、成熟企業におけるR&D投資と株主還元策との関係は明確に示されておりません。日本では成熟企業を中心として研究開発が行われており、その成果が日本における経済成長を左右すると言っても過言ではありません。ガバナンス強化が進む中、「成熟企業がR&D投資の原資を確保することができるのか」この問いを明らかにする必要があると考え、このテーマを選びました。
Q3. 研究ではどのような成果が得られていますか?
成熟企業においては、R&D投資を行うと投資家の懸念から株主還元を増やすよう求められる傾向が確認されました。今後は、ガバナンス改革が進むことで、成熟企業がR&D投資と株主還元とのバランスをどのようにとるのかについて検討することが重要な課題です。
Q4. この研究が進むと、社会や暮らしにどんな変化がありますか?
この研究が進むと、企業ガバナンスの強化によって、(1)企業がどのようにR&D投資と株主還元との資源配分を決定するのか、また、(2)株主還元を行うことにより株式市場への評判を高め外部資金調達を有利に行うことが可能となるのかを明確にすることができます。この研究の成果は、日本企業における長期的な成長戦略につながり、「持続的な企業価値の創造をどう支えるか」という視点を投資家に提供することとなります。結果として、R&D投資が効率的に行われれば、新しい技術や製品が生まれる可能性が高まり、日本経済の活性化や私たちの生活がより豊かになることが期待されます。
Q5. この研究の魅力は何ですか?
株主還元と研究開発投資という企業の根幹に関わる資金配分を、ガバナンス改革という現実の動きと結びつけて分析できる点です。投資家の圧力が実際に企業の資金配分にどう影響するのかを示すことで、学術的な新しさと実務的な有用性を兼ね備えています。
